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エスター [外国映画]
訪れたのはある女児ばかりの孤児院。施設内と子どもたちを優しいまなざしで見つめるふたり。そして夫の目にとまったひとりの少女。彼女は階下で行われるパーティからはぐれて2階でひとり黙々と絵を描いていた。自分は人と少し変わっているのだという少女を夫が気に入り、そして自分と少し似ているかもしれないと思った妻も同意した。これがロシア出身の9歳の孤児、エスター。
容姿端麗で頭が良く、少し個性的な彼女は徐々に家族に溶け込み、兄とはまだうまくいかないまでも、妹と両親には心を開き始めているようにみえた。ある事件が起こるまでは…。それがきっかけでやがて明らかになるエスターの恐ろしい正体。いや、この展開は読めませんて。
終始緊張感のある文句なしのサスペンスホラー。エスター、ホント怖い。
無防備 [日本映画]
舞台は田園風景が美しい、ある町のプラスチック工場。巨大な機械からポチポチと産み出された製品を淡々と検品する従業員・律子。ちょっとくたびれた30代の彼女は、いつもうつむき加減にとぼとぼ歩いて自宅と工場を往復している。
ある日、定職に就けない夫を支えるためのパートだという妊婦が工場に入社。大きなお腹を見て、律子の中で、かつて自分が妊婦であったときの記憶がフラッシュパックする。彼女のお腹が大きくなるにつれ、コントロールしづらくなっていく律子の感情。
冷え切った夫婦関係。自分では見つけられない存在価値。悲しい記憶とどうしようもない現実。そこに追い打ちをかけた、夫の冷たいコトバと仕事のミス。
「もう死んじゃえ」
そんなとき律子に新しい一歩を踏み出させてくれたのは、産まれようとする新しい命。嫉妬して憎んでさえいた妊婦の出産に関わることで、絶望の底から這い上がるきっかけが見える、すがすがしいエンディング。このすがすがしさは男性監督ゆえ、でしょうか。
きっかけは「妻の妊娠」という監督。その妻を妊婦役に、臨月で撮影されたそうで、このタイミングでしかできなかったというのも素晴らしい。心配されていた(?)出産シーンは特にグロいわけでもなく全く問題なし! やっぱり女は強いんだと、見れば納得の1本。
パーク アンド ラブホテル [日本映画]
彼女は毎日ほぼ同じペースで同じような仕事を淡々とこなし、無愛想に生きている。できるだけ関わらないように目を伏せて通り過ぎようとする通行人の傍らで、堂々とラブホテルに入っていくのは小学生、子連れの母親、老人たち……! その存在を知らない人にとっては、当然我が目を疑う光景。彼らの目的は “ ラブホ ” ではなく、屋上にある公園なのだ。私設公園を艶子が解放しているため、ホテルの開店とともに人が訪れ、そして主人の都合で閉め出される、というわけ。
訪れる常連たちと、そこへ迷い込んできた新人が触れ合って少しずつ見えてくるのは、それぞれが抱える不安や苦悩。家庭環境が複雑な家出少女、夫との関係に悩む主婦、ラブホテルにいつも違う男と現れる常連客、そして艶子自身が捕らわれている過去。
自分の中に答えを持っているのに踏み出せない一歩を、それぞれの出会いが “ きっかけ ” となって前進していく、小さな勇気の物語。人生には停滞も必要! でも、そこから一歩踏み出すための小さいけど大きな一歩も必要!!
第16回 大阪ヨーロッパ映画祭 [映画祭]
以前から気になっていた「大阪ヨーロッパ映画祭」に初参加。作品ごとに出演俳優や脚本家などのゲストが来日するのは通常の映画祭と変わらないが、他の映画祭(例えば東京国際映画祭やフランス映画祭)に比べてゲストとの距離が近いのが魅力的(待ち時間などにうろうろしているゲストもいる)。ゲストたちの知名度がそれほど高くないにしても、作品についてのエピソードやコンセプトを本人から直接聞くことができるのはまたとないチャンスなのだ。
めちゃくちゃ寒かった22日。鑑賞したのは「リトル・ソルジャー」「アテネの恋人たち」「両替からはじまる物語」。その日のラインナップすべて。
一番見たいと思っていた「両替から…」を上回って良かったのは、「アテネの恋人たち(2009年・ギリシャ・113分)」。特に資料を読まず、タイトルから安易にハッピーエンドの美しい恋人たちの物語を想像していたら、みごとに裏切られた。ギリシャ神話にも度々登場するタブーをテーマにしながら、これまでになかった新しい展開を目指したという脚本家は、複雑な家庭環境から十数年ぶりに再会した父と性転換した息子との “愛” を見守る私たちを、苦い後味を残さないハッピーエンドへと誘ってくれる。
宣伝側を困らせる、各国語には訳せないコトバ遊びを交えた原題「Strella(ストレラ)」は、女性の名前である「ステラ」と狂気を意味する「トレラ」をあわせた造語だそうで、劇中、主人公の愛称として登場する。強いていえば「クレイジーステラ」あたりがよさそうだけれど、英題は「A Woman's Way」なのだとか。意味がわからないので脚本家は反対したのだそうだ(笑)。では、邦題のほうは内容とのギャップを狙ったのだろうか…。
勝手なことを言えば、悪天候のため作品と作品の間の微妙な時間を過ごせる場所がなかったことと(寒い中外に並んで待ったし…)、1作品1回づつしか上映されないのがちょっと不満。とはいえ、次回は新作だけでもすべて見たいと、すでに行くつもりだったりして。やっぱり映画祭は楽しい♪
めちゃくちゃ寒かった22日。鑑賞したのは「リトル・ソルジャー」「アテネの恋人たち」「両替からはじまる物語」。その日のラインナップすべて。
一番見たいと思っていた「両替から…」を上回って良かったのは、「アテネの恋人たち(2009年・ギリシャ・113分)」。特に資料を読まず、タイトルから安易にハッピーエンドの美しい恋人たちの物語を想像していたら、みごとに裏切られた。ギリシャ神話にも度々登場するタブーをテーマにしながら、これまでになかった新しい展開を目指したという脚本家は、複雑な家庭環境から十数年ぶりに再会した父と性転換した息子との “愛” を見守る私たちを、苦い後味を残さないハッピーエンドへと誘ってくれる。
宣伝側を困らせる、各国語には訳せないコトバ遊びを交えた原題「Strella(ストレラ)」は、女性の名前である「ステラ」と狂気を意味する「トレラ」をあわせた造語だそうで、劇中、主人公の愛称として登場する。強いていえば「クレイジーステラ」あたりがよさそうだけれど、英題は「A Woman's Way」なのだとか。意味がわからないので脚本家は反対したのだそうだ(笑)。では、邦題のほうは内容とのギャップを狙ったのだろうか…。
勝手なことを言えば、悪天候のため作品と作品の間の微妙な時間を過ごせる場所がなかったことと(寒い中外に並んで待ったし…)、1作品1回づつしか上映されないのがちょっと不満。とはいえ、次回は新作だけでもすべて見たいと、すでに行くつもりだったりして。やっぱり映画祭は楽しい♪
『ウルトラ・ミラクル・ラブストーリー』 [日本映画]
監督は、口では説明できない “こういう感じ” をだいたいで伝えているにもかかわらず、いまのところまわりの人々が上手に受け取ってくれているのだそう。ご本人を見て、「ああ、この監督にしてこの作風あり、なのだな」と、妙に納得(笑)。トークショーは時間が遅かったこともあり短めだったけれど、見るのが20回目(!?)という人もいた観客との質疑応答もそこそこあって、全体的に満足。次回作の脚本をいままさに執筆中ということで、いまからものすごく期待♪ 公開いつかなー。
作品は、東京からやってきた麻生久美子演じる「町子せんせい」以外はすべて “青森弁”。何言ってるか分からなくても、流れでなんとなく察すれば問題ないと思うので、それはそれで良い(笑)。チラシが気になってる人はとりあえず、どうぞ。たぶんハマります。物語の訳は分かんないですが(笑)、それがこう、クセになってリピーター続出ってことになるんでしょうね。私ももう1回観たいと思うもの。
それにしても松ケンの青森弁はイイ。ペプシのCMでもちょっとなまってるのが分かるけれど、じつはインタビューのときなんかはだいたいなまっているんですよね。あれ、ずるいよなー。
『空気人形』 [日本映画]
古アパートの一室で男と暮らす空気人形。男は彼女を溺愛している。かつての彼女、“めぐみ” の代わりに。彼女は知っている──自分は所詮ただの「代用品」だ、と。ある朝、彼女は「心」を持ってしまう。持ってはいけなかったはずの心を持って、男が仕事に行っている隙にちょっとお出かけ。そこで出逢った、初恋の人。お近づきになりたくて、彼が働くビデオ屋でバイトを始める。やがて、空っぽだった心は彼への思いで溢れていく。
ところが、バイト中のある日、彼女が人形だと判明するハプニングが発生。しゅるしゅると抜けていく空気。しぼんでゆくカラダ。見ないで・・・。彼は動揺したけれど、必死に彼女を助けようとする。栓はどこ? まずはセロテープで傷口をふさぎ、彼は彼女のカラダに「息」を吹き込む。空っぽだったカラダが、好きな人の息でいっぱいに満たされることが、こんなにもエロティックな行為だとは知らなかった。
ビックリした? と問う彼女に、彼は答える。ボクも同じだよ。
そう、「都市生活」は寂しいのだ。空虚な心とカラダを抱えた彼女が浮き彫りにするのは、人との関わりかたに苦戦している都市生活者たちのそれぞれの「孤独」。
もうホントに、“空気人形” 役はペ・ドゥナ以外ない、絶対! ってほどハマり役なドゥナちゃんは素晴らしい。拍手です。
公開は9月26日。
『幸福な食卓』 [日本映画]
食卓を囲むある家族。父、兄、妹。いまは別居中の母が決めた習慣は変わらず、朝は家族が揃い、いろいろな報告をする時間。重大な発表も多々行われてきたのだが、その日は父が3度目のサプライズ発言──今日から父をやめようと思う、と。すでに仕事はやめているのだけれど、今度は大学受験をするのだそうだ。そうか、頑張って、と応援する兄妹。妹は高校受験を控えている。これでこの家には受験生がふたりいる、というわけだ。普通とはちょっと違うけれど。
そもそも家族が少しおかしくなったのは、父のある事件が発端。それが原因で母が家を去った。たまに食事を作りに来たり、妹が母の一人住まいの家を訪ねたりしている。離れていても家族には変わりはないのだ。父は父をやめても変わらず子どもたちを見守り、母は子どもたちを愛し、兄は大らかなふりをしながら生き、妹は勉学に励みながらういういしく恋をする。
外から見れば幸せそうな家族にも絶対にある「ゆがみ」。家族の誰かひとりの、たとえば父の修正しきれなくなった「ゆがみ」が浮き彫りにした、家族の現実。
頭の良い兄は言う。中学の頃まではすべて完璧にこなせた、と。その後は「ゆがみ」を全部は修正しきれなくなり、生き方を少し変えたのだ。でもそれは正解ではなかったのかもしれない、とも。「完璧」だとか「やり遂げる」とか「ゆがみ」を修正できないと悩む人たちはそれで自分を責めるけれど、いまがまだ途中なのだったら、まだ間に合うのではないか……私は基本的に「いまはまだ途中で、完璧にできたことも、やり遂げられたこともなにひとつない」と思っている。自信がひとつもないってわけじゃなくて。ひとそれぞれかもしれないけれど、完璧に生きる必要なんてたぶんない。だから “お父さんがお父さんをやめる” 選択もアリだったなと思えてしまう、良作です。
原作は瀬尾まいこのベストセラー『幸福な食卓』(講談社)。
『精神』 [ドキュメンタリー]
ドキュメンタリーは苦手だとずっと思っているのだけれど、ごくマレにすんなり観られる作品がある。『精神』もそのひとつ。ナレーションも音楽もおしつけがましさもないところが、その要因かも知れない。カメラは淡々と患者たちを見つめ、時に語りかけてコトバを拾う。舞台は岡山のある精神病院。古い民家のようなたたずまいのその病院は、生活保護受給者が多く、精神的なもの以外にもいろいろな問題を抱えている。監督曰く、ただでさえ、“健常者” からすればベールにつつまれたような世界。だからこそ顔を隠さずに出演してくれる人を探した。熱心に説得や交渉をして。
彼らが語る過去は衝撃的ではあるけれど、同時にありふれてもいる。私たちの身近なできごとであるかは別として、理解出来る範囲内なのだ。はっきりと定義できず、そして見えない “ボーダーライン”。それを越えてしまったきっかけも彼らは自分で説明出来る。
調子の良い時などは特に “普通の人“ に見えることもある。じゃぁ、その普通ってなに? その “ボーダーライン” はどこ? そんなことをこっそり考えてしまう。監督自ら称している通り、“観察映画” というのがふさわしい。
このご時世、「自殺を考えたことがある」という人は意外と身近に潜んでいたりするんです、きっと。あとで考えればあれはサインだったと、後で気付いて少しづつみんなが後悔したりして。
興味のある人は劇場へ。全国順次公開中。
http://www.laboratoryx.us/mentaljp/
写真はチラシだと思うんだけど、こんなだったのね。
相当な覚悟がいりそうに見えるけど、そこまででもないと思うな。
軽々しくはオススメできないのだけど。
『永遠のこどもたち』 [外国映画]
長く閉鎖されていた、かつて自分が暮らした孤児院を買い取り、障害を持つ子どもたちのホームとして再建させるために移り住んできたラウラ。理解ある夫と、病気を抱えた幼い息子とともに、新しい未来に胸をふくらませながら。着々と準備が整い、廃虚だった広い洋館は少しずつ息を吹き返す。
胸がざわつきはじめたのはいつからだろう。見知らぬ老婆が訪ねてきた時から……それとも海岸で息子が見えない友だちと話す姿をみた時から……? そして、オープニングパーティの最中に事件は起きる──息子の失踪。夫婦の必死の願いもむなしく、何の進展もないまま、ただ時は過ぎていく。
ラウラは気付いている。息子の失踪にはあの “見えない友だち” が関わっている、と。事件当日、彼女は見たのだ。怪しいかぶり物をしたあの少年が息子を連れて行ったに違いない。息子のためなら何でもし、絶対にあきらめようとしないラウラ。一方夫は、徐々に希望を失っていく。
息子はかつて言っていた「僕は大人にならないよ」と。まるでピーターパンのように。歳をとらないこどもたちーー “永遠のこどもたち” が棲む世界へ、ようこそ。
だるまさんがころんだ…
だるまさんがころんだ…
振り返ったらゲームがはじまる。
そして迎える、切なくて悲しくて恐ろしいクライマックス。
『ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢』 [アニメーション ]
7月18日より公開ですよ。短編とはいえ見応えのある29分。
期待して観てもなお可愛い〜のです。日頃、猫派か犬派かと迷うんだけれども(飼えないのに飼ったとしたら…と考えたりするわけだけれど)、「ウォレスとグルミット」を観たなら、断然犬! というかグルミットが欲しくなる。結構本気で。
今回は、“ベーカリー街の悪夢” というだけあって、なんと連続殺人事件が発生。そこでいつものように活躍するのが、グルミット。見逃しませんよー、怪しい人物を。あの、発明能力もステキだわー。
さて、いつのまにかジブリ配給となってましたが、6月上旬に来日ていしたニック・パーク監督イベントがジブリ美術館で行なわれたのですね。日本吹替版の声の出演者、津川雅彦さんと、森公美子さんとともに。監督は50歳らしいのだけれど、若々しい。頭の中がこんなにラブリーだからかしら。まだまだ新作を生み出してくれることを期待♪
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